不動産鑑定評価の問題点07 底地価格と実際支払賃料

貸家及びその敷地の鑑定評価では、その価格は実際実質賃料を理論的な根拠としている。
しかし、実際実質賃料を基準とすることは、実際支払賃料に基づく収益価格に敷金額そのものを加算することと同じであり、鑑定評価を行う場合は、後者のほうがよいことを問題点06で記載した。(実際実質賃料か実際支払賃料か参照)

底地の場合はあくまでも実際支払賃料に基づく収益価格で鑑定評価を行うこととなっている。
このことは不動産鑑定評価基準(以下基準という)でも明記されているが、貸家及びその敷地が実質賃料をその理論的根拠としていることから、非常にわかりにくく多くの人から最も質問の多い所である。
底地とは、宅地について借地権が成立している場合の土地の所有権のことであり、借地権には旧借地法に基づく借地権、平成4年に成立した借地借家法(平成11年に一部改正)における普通借地権、借地借家法第四節の定期借地権があるが、ここでは、旧借地法の底地と借地借家法の普通借地権のみを対象とする。
すなわち、上記定期借地権で授受が一般的とされている保証金については考慮外とし、一時金としては譲渡的性格を有する権利金のみを対象として述べるものとする。

さて、その疑問点として次のことがよくいわれる。

・権利金の運用益及び償却額も底地人に入る収入であるから、収益価格査定の賃料は実際実質賃料になるべきではないか。
・キャッシュフローで考えた場合、実際支払賃料は底地所有者の価値ではない。底地所有者の価値は、実際実質賃料で考えるべきである。
両者は同じことであるが、この疑問は、一時金の解釈が過っていることによる。
貸家及びその敷地における敷金としての一時金は、あくまでも預かり金的一時金である。一時的に敷金という金銭資産が変更されていた不動産資産の一部が、敷金が返却されることにより不動産という資産に戻ることから、敷金はその不動産の資産の一部を構成し、敷金を含んだ実質賃料が収益価格の理論的根拠となるのである。(実際実質賃料か実際支払賃料か参照)
しかし、借地権における権利金の場合は異なる。
権利金とは、借地権の譲渡を意味する一時金であり、敷金が一時的に金銭資産に変更されるのとは異なり、不動産資産の一部を金銭という資産に変更してしまうものである。
すなわち、不動産の所有者は、借地権を設定することにより、借地権の負担のある底地という資産と権利金という金銭資産を所有することになるのである。

具体例を示そう。
今、権利金を支払って借地権を創設することを考える。(自然発生的な借地権は、考え方の延長線上にあるから、とりあえず権利金支払いの創設借地権を考えることとする。)

7-1

・借地権設定後

7-2

〔解説〕
借地権が設定されることにより、更地の一部を構成している借地権という権利を金銭としての資産(¥600万)に変更した。
すなわち、更地の所有者は、ストックとしての借地権を売却し、600万円という現金を得たことになる。このことは、所有者は賃料収受権としての底地を所有していることから、底地の価値(400万円)について、(400万円×5%=20万円)の賃料を毎年もらうことと、現金の600万円を、更地の価値に変わって所有することになり、Aの財産の量は1000万円で変化していないが、その構成内容が変化したことになる。

◎その後底地及び借地権を売買した場合の資産内容

・Aが底地を売却した場合のAの資産内容

7-3

〔解説〕
Aは、底地のみを所有している(借地権は既に売却し、¥600万という金銭に変換されている。)ことから、底地を売却する場合は、底地の賃料(400万円×5%=20万円)を毎年得る賃料収受権を持つ底地の価値(400万円)で売却することになる。Aが底地を売却した場合は、底地の価値が現金という資産に変更されたことになる。すなわち、当初のAの更地の価値(借地権600万円の価値と底地400万円の価値)が、借地権設定後底地を売却することにより、金銭の1000万円に変化したことになる。

・Bが借地権を売却した場合のBの資産内容

7-4

〔解説〕
Bは、土地を(400万円×5%=20万円)で利用できる権利を持っている。
借地権を持たずに更地を利用するとした場合は、(1000万円×5%=50万円)の賃料が必要であるのに、20万円で利用できることから、賃料差額は(50万円-20万円=30万円)となる。
すなわち、賃料の30万円分安く利用できることになり、借地権の価値は(30万円÷5%=600万円)となる。
今、Bが第三者に借地権を600万円で売却した場合は、Bは600万円の借地権という財産を、金銭の600万円に変化したことになる。

上記疑問点のキャッシュフローでは実際実質賃料でなければならないということについては、ここまでの展開で明らかとなる。
すなわち、借地権を設定するまで更地として土地全体の財産を所有していたAは、当初の売買で、所有権が借地権と底地に分割され、AからBへ借地権が売却されることにより、Aの所有権の価値は、底地の400万円と金銭の600万円に変化している。
Aの財産としては1000万円で同じであるが、その構成内容が不動産資産としての借地権の600万円ではなく、金銭としての600万円を持っていることになり、金銭の600万円が運用益及び償却額を生み出すものである。
運用益及び償却額は、金銭の600万円をフローに変換したものであり、現在価値に戻すと600万円の金銭を表し、不動産資産としての借地権ではなく、あくまで金銭としての財産である。
Aの財産全体は1000万円で変化していないので、金銭を含めた全財産価値を考える場合は、実際実質賃料で考えるのが当然であるが、これは、底地の価値と借地権の価値を考えているのではなく、Aの財産全体を考えていることになる。
上記疑問は、Aの財産全体(金銭を含めた)と、借地権・底地に区分された権利とを混同していることになる。

権利金という譲渡的性格を有する一時金の場合は、更地が借地権と底地に区分されていることを意味しており、底地の価値は実際支払賃料でなければならない。
借地権の場合は、権利金を支払う創設的な借地権ではなく、長期の賃貸借の継続により、自然発生的に借地権が認定されることになる場合がある。すなわち実際支払賃料が新規賃料(正常実質賃料)に比較して低くなっている場合、すなわち賃料差額が発生している場合、実質的に権利金の支払いがあったことと同じこととなる。
従って、底地の鑑定評価においては、その基準となる賃料は実際実質賃料ではなく、実際支払賃料である。

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