不動産鑑定評価の問題点04 地域分析が先か、個別分析が先か

不動産鑑定評価基準では、第6章で地域分析及び個別分析となっており、地域分析が個別分析より先に述べられている。また、第8章の鑑定評価の手順の第5節で、資料の検討及び価格形成要因の分析として、“価格形成要因の分析に当たっては、収集された資料に基づき、一般的要因を分析するとともに、地域分析及び個別分析を通じて対象不動産についてその最有効使用を判定しなければならない。”と記載されている。

不動産を鑑定評価する手順としては、個別分析より先に地域分析を行うこととなっており、少なくとも個別分析の前に地域分析を行うことは、不動産鑑定評価上の常識とも云うべきレベルになっているのかも知れない。

しかし、本当に地域分析が先なのだろうか。

鑑定評価の手順として、地域分析・個別分析の前に対象不動産の確認・確定という問題があるが、対象不動産を確認・確定してすぐ地域分析から行うことが可能だろうか。
基準では、不動産は全てある地域に属していることが前提となっていることから、このような記載になっていると思われるが、現実に不動産を鑑定評価する場合には、すぐ地域分析を行うことは困難である。
住宅地域内の更地または商業地域内の更地(鑑定評価の対象として一般的な類型)にしても、地域分析にすぐはいることは困難である。
土地と建物が一体として取引される複合不動産では、それぞれの建物の個別的要因が異なり、地域概念のみでは把握できないが、更地の場合でも同じである。マンション用地の場合は、土地価格は地域属性からのみで導き出せるだろうか。
鑑定評価の対象として更地が多く、地域の標準的な使用と対象地の最有効使用が概ね一致することが多いことから、

地域分析(標準的使用を判定)→個別分析(最有効使用を判定)

と辿っても大きな影響がないが、まず対象不動産を実地調査した段階で、その最有効使用を特定し、最有効使用に基づき地域との関わりや市場との関わりを分析しているのが現実的ではないだろうか。

すなわち、

個別分析(最有効使用の判定)→属する市場の分析(その中に地域分析)

のロジックを実際の鑑定評価では辿っているのを、鑑定評価書の記載で地域分析→個別分析と記載しているのに過ぎないのではないか。
実際の鑑定評価では、個別分析を行って対象不動産の最有効使用を判定し、その属する市場を特定し、その市場及び周辺市場を分析して対象不動産の競争力を判定しているのである。その途中に地域分析の必要性がある。
例えば、住宅地域内に所在する規模の大きな土地で、最有効使用がマンション用地と判定した場合、その属する市場は、相当程度広い範囲に分布する規模の類似している土地が代替不動産として存在し、マンション用地としての競争力を分析するのだが、その価格に影響を与える周辺市場として、その土地を分割して戸建住宅とする市場、または賃貸住宅、倉庫等の市場も周辺市場として考えられる。
これらを分析する場合に、地理的位置の地域分析が必要となるのであって、更地の場合といってもまず最有効使用を特定する必要がある。

近年、収益性が重視されて複合不動産の取引が中心となってきたことから、今回の基準改正で対象不動産の属する市場の分析が必要であるとし、対象不動産の最有効使用に基づく市場を分析することとなっているが、これは更地の場合でも同様である。
今回の基準改正に伴い、地域分析の中に市場分析が混在しているが、非常にわかりにくいロジックとなっている。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です


*

次のHTML タグと属性が使えます: <a href="" title=""> <abbr title=""> <acronym title=""> <b> <blockquote cite=""> <cite> <code> <del datetime=""> <em> <i> <q cite=""> <strike> <strong>