不動産鑑定評価の問題点02 収益価格は万能か

10年以上不動産価格が大きく下落している。
現在ではバブル経済前の水準より遙かに低くなっている地域も多い。
このような時代背景を受けて、「所有」より「利用」というフレーズの下に、収益価格礼賛の声が多い。不動産の価格として将来の収入(不動産の場合は賃料収入)の流列を現在価値に割り引くという収益価格(DCF法)がもてはやされている。

平成14年の不動産鑑定評価基準改正により、収益還元法の手法として明示されたことから、もはやDCF法を採用していない不動産鑑定評価書の信頼性は低いとまでいわれかねない状況である。
しかし、本当に不動産の価格はDCF法に基づく収益価格で決まっているのだろうか。
DCF法とは、それほど不動産の価格を正確に示すものなのだろうか。

不動産の価格を求めるために、鑑定評価の手法として原価法、収益還元法、取引事例比較法があり、収益価格は収益還元法によって求めた価格のことである。ⅰ

バブル期に取引事例比較法に基づく比準価格にウェイトを置きすぎたとの反省からか、収益価格こそが不動産価格の本質であるとの意見が強い。
しかし、収益価格で世の中の不動産価格が決定されているとすれば、その決定された価格で取引されているのではないか。
すなわち、本当にDCF法に基づく収益価格で決まっているのであれば、DCF法に基づく収益価格と比準価格が一致するだけのことである。

バブル期は、相当長期に渡って運用しなければ黒字転換しない不動産、極端には黒字転換が認められない不動産に対しても、転売利益があると見込めたことから投資が行われていた。この場合は当然のこととして、収益価格が比準価格に対して極端に低く(あるいは試算できない。)なっていた。このことから収益価格は、不動産価格決定の参考とならなかった時代がある。

現在は、価格が下落して投資採算性からみて有利であるとして、売買が成立しているのであり、取引されている不動産のうちのほんの一部の不動産のみが、収益価格と比準価格がたまたま一致している時代となっているだけである。

自己居住のために戸建住宅を購入するのに、DCF法による収益価格を考えて購入している人は皆無に近いのではないか。
また、投資物件にしても、バブル期は極端に低い利回りが一般的であったが、現在の10%を超える利回りが果たして適切なのだろうか。ⅱ

私たち不動産鑑定士は、バブル期にその価格が高すぎると感じつつ、収益価格による十分な検証をせずに比準価格に引きずられたという苦い経験を持っている。
今は、逆に価格が低くなりすぎているのではないだろうか。
現在投資物件として、利回りが10%を遙かに超える物件が取引されている実態を見ると、分子である賃貸料があまり変化していないことから、分母である不動産の価格が低くなりすぎていると思わざるを得ない。

収益価格は、市場で売買が成立している不動産価格の検証手段としては非常に有効であると思うが、収益価格のみで不動産の価格が決定されているという論調は明らかに言いすぎである。


ⅰ.原価法とは、費用生に着目した手法であり、その不動産の再調達原価を求めて減価修正を行う方法である。特に建物の場合は、新築価格(再調達原価)から建築後の年数に対応した修正を行って価格を求める方法である。ここで求めた価格を積算価格という。
ⅱ.賃貸収入を不動産の価格で割った値であり、賃貸収入そのものを採用する場合と、賃貸収入から諸経費を引いたネットの賃貸収入をいう場合があるが、ここでは明確な定義をしない。
また、現在の東京圏の利回りは低下傾向であり、10%を超える利回りは地方圏の投資物件に多い。

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