不動産鑑定評価の問題点01 不動産鑑定評価の90%の正確性

不動産鑑定評価で求めた価格は、100%正しいのだろうか。
現在、不動産鑑定士の関与した不動産価格として一般的に目にするのは、公示価格、地価調査価格等である。


地価公示・地価調査は、通常公的評価といわれているものであるが、そのほかに、今では、固定資産税の評価、相続税の路線価付設の評価にも、不動産鑑定評価制度が導入されている。
地価公示及び地価調査の価格は客観的・普遍的な交換価値を表すものとして公表されており、多くの公的評価の基準地として認定されていることから、あたかも100%の信頼性を持った確定値であるかのような性格が強くなってきている。
一方、バブル経済時は、「地価公示価格は、低すぎて使えない。」
また現在では、「地価公示価格は、高止まりしている。」等々批判も強い。
もちろん、これらの価格を決定する作業は大変な労力を伴っており、不動産鑑定士は分科会組織により、多くの会議を開催し、本当に長い議論を尽くして正常価格を指向している。
しかし、およそ世の中で起こる事象に、数学の解のように一意に決まるものがあるだろうか。
不動産鑑定評価について、不動産鑑定評価基準には次のとおり記載されている。

“不動産の鑑定評価とは、現実の社会経済情勢の下で合理的と考えられる市場で形成されるであろう市場価値を表示する適正な価格を、不動産鑑定士等が適格に把握する作業に代表されるように、練達堪能な専門家によって初めて可能な仕事であるから、このような意味において、不動産の鑑定評価とは、不動産の価格に関する専門家の判断であり、意見であるといってよいであろう。”(アンダーラインは筆者)

不動産鑑定評価の本質は、専門家の判断であり、意見なのだ。
その意見は、その不動産をどう利用するのが最も良いのか、その不動産に対する需給動向はどうか、その不動産はどのような特性を持っているのかを全て調査し、不動産鑑定士が判断し、鑑定評価の手法を適用することによって求められる。
したがって、それらの判断が全ての鑑定士で、全て同じとなることはない。
当然なこととして、同時に同じ不動産を別の不動産鑑定士が鑑定評価をした場合、価格に差違が発生する。むしろ一致する方がおかしいともいえる。

公的評価がますます多くなっている現在、あえて私は不動産鑑定によって求めた価格の信頼性・正確性を考えてみたい。
不動産の取引は、一般の人々にとっては本当に一生に一度あるかないかの取引であり、情報が極端に少ないことと当事者間の事情により、不動産の価格は大きく変化するものである。このことを一般的には分散が大きいという。
仮に1000万円の同じような不動産がいくつかあり、当事者間の交渉により取引価格が決まったとした場合、その価格は、仮に500万円から1500万円に分布したとしよう。
その場合、平均値は概ね1000万円程度になるが、実現した個々の価格は大きく平均値から離れているものである。
不動産鑑定士は、常に取引事例等を収集して市場の調査を行っていることから、その付ける価格は、同じ1000万円の不動産に対して、一般の取引価格の分散に比較してより少ない分散をもつであろう。(例えば、900万円から1100万円の間)

私は、それぞれの不動産鑑定士の価格は、結果として90%正しいと思っている。
これは、10%間違っていると言うことを言いたいのではない。不確実性の強い不動産の価格について、90%の信頼性を保持しているということは、非常に正確な価格情報を提供していると思っている。
しかし、それぞれの不動産鑑定士の価格が90%の信頼性を持っているとしても、それが多くの不動産鑑定士が協力して多くに地点の価格付けを行う場合に、各地点のバランスが90%正しいことにはならない。
ある鑑定士がA地点を10万円、B地点を9万円と価格付けをしたとしよう。別の鑑定士が、A地点の同等の価格をもつA’地点を9万円、B地点と同等の価格をもつB’地点を8万円と鑑定評価した場合、不動産鑑定士の価格バランスとして、本来ならば
(A=A’)>(B=B’)
となるところであるが、現実は
A>(A’=B)>B’
となり、価格バランスが異なることになる。
このことは、多くの地点のバランスを検討する場合には、不動産鑑定士間の打合せが最も大切なこととなる。

不動産価格は、真の値がわからないだけに、不動産鑑定士は100%の価格を必死に模索して価格を決定しているのであるが、一方、長年続けて公的価格が公表されるということで、その変動状況も付随的に明らかになる。
毎年公表される地価公示・地価調査においては、マスコミ等でどちらかといえば変動率主体で発表されることが多い。
そのことによって、これらの価格が各地点の変動率主体と勘違いをすることにより、不動産鑑定士はあまりに細かい世界に入りすぎているのではないだろうか。
不動産の価格はある程度ダイナミックに変動するものであるが、それを集約した場合の平均変動率が、各個々の地点の変動率を暗黙の内に規制するようなことがあってはならない。

不動産鑑定士の追い求めるものは、あくまで正常価格であり、それは不動産鑑定士の宿命のようなものである。しかし、それでもあくまで不動産鑑定士の価格は、専門家の意見であり、その信頼性・正確性は90%だと割り切ることも大切なことだと考える。


〈参考文献〉
Alan W. Evans, (1995), ’The Property Market : Ninety Per Cent Efficient?, Urban Studies,Vol.32,No.1,5-29.

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