不動産鑑定評価の問題点33 定期借地権の理論値は何か?(預かり金的一時金との関係)

旧来の借地法に基づく借地権では、設定時に一時金を授受することが一般的であった。
その一時金は、設定対価としての一時金であり、「権利金」と呼ばれる。
現在の借地借家法に基づく定期借地権では、一般的には預かり金的性格を有する「保証金、敷金」または、賃料の前払い的性格を有する「前払い地代」の授受は認められるが、「権利金」の授受は行われないことが多い。
設定対価としての「権利金」と預かり金的性格を有する一時金(以下、預かり一時金と称する。)と、借地権価格の関係はどのようになるのかを検討するものとする。

1.設定対価としての権利金の場合(旧来の借地法に基づく借地及び借地借家法の普通借地の場合)

設定対価としての権利金の場合は、権利金の額が借地権価格を形成するものであるが、まず、下記のとおり諸元を設定する。

土地価格:P
権利金:A
利回り:r
正常実質地代:a
正常支払地代 :c
差額地代:s

権利金を授受して普通借地権を設定する場合、土地所有者は当然のこととして、正常実質地代を下記のとおり要求する。

a=P×r

ここで、権利金(A)の授受があるので、正常支払地代は、下記のとおりとなる。

c=(P−A)×r=P×r−A×r=a−s

従って、  

SnapCrab_NoName_2014-8-9_13-41-47_No-00 

第1項が底地価格となり、第2項が借地権価格である。
第1項は権利金を支払った場合の正常支払い地代(c)を利回りで割り戻した金額(底地価格)と、第2項の権利金を支払った分正常実質地代(a)から、権利金を支払ったことにより減額した差額地代(s)を利回りで割り戻した金額(借地権価格)であり、土地価格は底地価格と借地権価格を合計した金額となっている。

従って、借地権価格は、差額地代が理論的根拠となっており、設定当初に権利金を支払った場合は、設定当初は権利金の額に相当した差額地代が発生することから、権利金の額が借地権価格を構成するのである。

2.預かり金的性格を有する一時金の場合(借地借家法の定期借地権の場合)

預かり一時金を授受する場合の借地権価格を検討するに当たり、上記以外に下記の諸元を設定する。 

預かり一時金:Q
実際支払地代:d
期間:n

定期借地権の場合は、期間が限定されていることから、期間(n)を設定し、預かり一時金(Q)を支払った場合に、対象地の経済価値に相当する正常支払地代を支払っているとすると、土地価格は、下記のとおりである。

SnapCrab_NoName_2014-8-9_11-58-41_No-00

第1項は、地代及び預かり一時金の運用益に年金現価を乗じた値であり、第2項は土地の復帰価格から預かり一時金の返済額の現価を控除した値である。
この式を展開し、正常支払地代(c)を求めると、下記のとおりである。

SnapCrab_NoName_2014-8-9_12-0-38_No-00

すなわち、預かり一時金を支払った場合の正常支払地代(c)は、第1項の土地価格から預かり一時金を控除した価格に利回りを乗じた金額に、第2項の将来返還する敷金を準備するために積み立てる金額の合計額(償還基金率を乗じた金額)となる。

ここで、正常支払地代より低い実際支払地代(d)の場合、差額地代は、下記のとおりである。

s = c − d → c = s + d

定期借地権で差額地代が発生している場合の土地価格は、前記式に上記式を代入して、下記のとおりとなる。

SnapCrab_NoName_2014-8-9_12-4-5_No-00

2段目の式の第1項と第2項を合計した金額は、実際支払地代に預かり一時金の運用益を加算した額の年金現価と、土地の復復帰価格から預かり一時金の返済額の現価を控除した値で、底地の経済価値を示しており、第3項が借地権価格となる。
すなわち、定期借地権で預かり一時金を考慮した場合の借地権価格は、

SnapCrab_NoName_2014-8-11_8-40-9_No-00

となり、差額地代に年金現価率を乗じた金額となる。

3.借地権価格の理論値

地権価格の理論値は、権利金の場合及び預かり一時金の場合を通じて、いずれも差額地代に基づく借地人の経済的価値であり、権利金の場合は設定当初は権利金が差額地代を発生させ、権利金の額が借地権価格を構成する。
しかし、預かり一時金の場合は、預かり一時金は支払地代の多寡に影響を及ぼすのみであり、差額地代が発生している場合に、その差額地代に年金現価率を乗じた金額が借地権価格を構成する。
すなわち、差額地代が発生している場合に借地権価格が顕在化するものであり、理論的には、預かり一時金は定期借地権の価格を構成する要素とはならないものである。

以上

 

 

 

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