千思万考18 「賃料評価の問題点」についての研修会を終えて

今年の研修会(中国地区)では賃料評価を問題点として採用した。
賃料の鑑定評価は、まず、地代と家賃に区分され、それぞれが新規賃料と継続賃料に区分される。
通常、「賃料評価の問題点」というと、継続賃料を指すことが多いと思われるが、新規賃料にも大きな問題があり、また、地代か家賃かによって、その性格も大きく異なることから、一概に「賃料評価」全体の問題点を把握することは困難である。

不動産鑑定評価基準では、賃料評価に関して記載されている部分は、平成2年基準から変更されていない。
平成14年の基準改正において、全く変更されず手つかずで残っている。(その後基準改正でもそのままである。)
不動産鑑定評価基準が放置されている間に、多くの裁判例が出現し、また、鑑定評価について多くの批判的な意見が出されている。このままでは私たち不動産鑑定士の専門性を疑われる事態となってきているのである。
いずれ近い時期に、賃料評価に関する不動産鑑定評価基準も改正されるだろうが、本来であれば専門家と呼ばれる私たちが裁判例に先んじて考え方等を示さなければいけないのではないだろうか。

まず、根本的な問題点から再検討する必要があるのではと考え、今年の研修会では、下記の問題点を検討した。

1.価格と賃料の元本と果実の関係について

価格と賃料には本当に元本と果実の相関関係があるのだろうか?
また、その相関の強さはどのようなものだのだろうか。
もし、相関関係が強いものだとすると、バブル現象など本来発生しないのではないだろうか。
この問題を検討せず、言葉面のみで「元本と果実」と言ってもあまり意味はない。
では、新規賃料ではどうか、継続賃料でもなぜ元本と果実が必要なのか、等々真剣に検討する必要があると考えている。

2.継続賃料は、不動産鑑定士が扱う領域なのか?

昭和41年の当初の不動産鑑定評価基準では、継続賃料は「特殊賃料」であり、賃料評価は「原則として正常賃料を求める」となっている。
昭和44年基準で、継続賃料は「限定賃料」と称され、その手法としては、差額配分法が記載されているのみである。
平成2年基準で、始めて継続賃料の手法「差額配分法」、「利回り方」、「スライド法」、「賃貸事例比較法」が明記された。
新規賃料と異なり、当事者間の事情が大きく左右する継続賃料について、本当に不動産鑑定士が「客観的」な適正賃料を求めることができるのだろうか。きわめて「主観的」な内容について、本当に「客観性」を保てるのだろうか。
このこともきちんと論議されなければならないと考えている。

3.扱う領域だとすると、試算賃料の開差はどのように調整するのか?

次に、もし、継続賃料を不動産鑑定士が扱う領域だとすると、現在、継続賃料評価において、原告と被告で取った鑑定評価書が大きく乖離することは、放置できないのではないか。
「客観的」な価格を求めるといっておきながら、当事者の一方に偏ったかに思われる最終結果が出てくる場合が多い。
このことを看過しておいて、継続賃料を不動産鑑定士が扱う領域だというのは、説得力がない。
基準において、多くの手法から試算される賃料の調整方法を明らかにし、誰が行っても極端な開差がでないような体制を取らない限り、社会の信頼性はないのではないだろうか。

このようなことを、検討内容として議論した。
時間的に短いことから、十分議論し得なかったが、私たちは、常に基本に戻って鑑定評価の足もとを固めていく必要があると考えている。

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