不動産鑑定評価の問題点28 画地条件の格差修正率はかけ算で求めていいのか

1.画地条件とは
不動産鑑定評価基準では、土地の個別的要因の主なものとして、実に多くの内容が記載されている。住宅地については、以下のとおりである。

① 地勢、地質、地盤等
② 日照、通風及び乾湿
③ 間口、奥行、地積、形状等
④ 高低、角地その他の接面街路との関係
⑤ 接面街路の幅員、構造等の状態
⑥ 接面街路の系統及び連続性
⑦ 交通施設との距離
⑧ 商業施設との接近の程度
⑨ 公共施設、公益的施設等との接近の程度
⑩ 汚水処理場等の嫌悪施設等との接近の程度
⑪ 隣接不動産等周囲の状態
⑫ 上下水道、ガス等の供給・処理施設の有無及びその利用の難易
⑬ 情報通信基盤の利用の難易
⑭ 埋蔵文化財及び地下埋設物の有無並びにその状態
⑮ 土壌汚染の有無及びその状態
⑯ 公法上及び私法上の規制、制約等

これらは、全て重要な項目であるが、土地に対する要因を路線価条件と画地条件に区分(路線価条件と画地条件参照)した場合、画地条件としては、上記の中で③と④が主たる内容である。

は、画地自体が有する間口、奥行、形状、面積が、前面道路沿いの標準的な間口、奥行、形状、面積を有する画地と比較した格差
は、画地と接面道路との関係であり、接面道路との高低差、角地、2方路等の接面状況が、標準的な接面状況を有する画地(例えば、道路と等高な中間画地)と比較した格差

2.土地価格比準表における格差修正率の計算方法
不動産鑑定評価基準では、具体的な比準方法について記載していないが、土地価格比準表(国土庁土地局地価調査課監修六次改訂)では、個別的要因の格差率の内訳の計算方法について、〔各条件ごとの格差率による修正値1の相乗積〕で行うと記載している。
即ち、個別的要因の格差(格差修正率という)は、下記のとおり計算することとなっている。

街路条件の格差修正率

×

交通・接近条件の格差修正率

×

環境条件の格差修正率

×

行政的条件の格差修正率

×

画地条件の格差修正率

×

その他条件の格差修正率

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対象地の格差修正率

また、それぞれの条件に基づく格差率について、街路条件、交通・接近条件、環境条件、行政的条件、その他条件については、各細項目ごとの格差率の総和であり、画地条件については、各細項目ごとの格差率の相乗積となっている。
路線価条件(路線価条件と画地条件参照)と画地条件に大きく区分した場合、各条件における格差率判定は、画地条件のみが相乗積となっているのである。

路線価条件:条件内の細項目の総和
画地条件:条件内の細項目の相乗積

この格差率を求める手法は、地価公示・地価調査の鑑定評価ソフトも採用しているほど、不動産鑑定評価の実際の手法として概ね定着している手法である。

3.画地条件の重要性
私は、不動産鑑定士の使命は、ある意味で個別分析だと思っている。
地域分析及び上記路線価条件を適用して求める路線価(各道路ごとに設定される標準的な価格)については、現在、相続税で明らかにされており、固定資産税でも設定している。相続税も固定資産税も不動産鑑定士が一部を受託して設定していることが多いことから、地価公示価格を頂点として、公的な価格バランスがある意味で取れており、また、誰でも調査しようと思えば調査可能な状態となっている。
しかし、それはあくまでも路線価という標準的な画地を想定した場合の価格であり、画地条件を含む対象地の個別性は含まれていない。上記③④の画地条件が対象不動産にどのような影響を与えているかは不明なのである。
路線価が今後更に精緻化され、公開されるにつれて、不動産鑑定士の仕事が減少するのではと危惧する人もいるが、私はそう思わない。個別分析の重要性がますますクローズアップされてくることだろう。
現在まで行われた土地価格の統計分析で、現実の取引事例を分析した場合、いい結果がでない理由の一つには、土地は路線価条件までは同じでも、画地条件が千差万別であり、一つとして同じ土地は存在しないことに原因があるのではないだろうか。

3.具体的な画地条件の格差
ここで、間口、奥行、形状、面積等については標準的な画地で、高低差がある画地を想定してみる。
高低差がない場合は、その画地の価格が1000万円である場合、高低差を解消するために盛土・擁壁等を行う必要があり、これらの造成費が100万円必要であるとすれば、対象地の価格は、誰が考えても900万円(∵1000万円-100万円)になる。
このことは、自明のようであるが、鑑定評価手法で相乗積となっていることから非常に誤りやすいこととなる。また、鑑定評価の手法が、単価主義を取っていることも、更にこの問題を誤りやすいこととしている。
まず、高低差のみが格差率の内容である場合の鑑定評価の手順を示す。

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単純に高低差のみが格差を生じる要因である場合は、単価主義をとり相乗積を採用しても全く問題ないが、次に、接面状況として角地に位置する高低差のある画地を考えてみる。
次の例は正しいだろうか。単純に相乗積を採用する。

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上記の総額で正しい総額を示しているだろうか。
この格差修正率は計算方法が誤っているのである。
対象地は、1000万円になるはずである。
まず、対象地の高低差がない場合を考えてみると、角地加算が10%であることから対象地の総額は1000万円×110%で1100万円である。
次に、対象地には高低差があることから、造成費として100万円必要であり、
1100万円-100万円=1000万円が対象地の総額となるはずである。
これは、画地条件の格差修正率の求め方が相乗積であると記載されていることから生じる誤りである。
この誤りを修正するためには、造成費の格差率を求める場合以降を修正しなければならない。

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即ち、造成費の格差率を求める分母に、角地の加算率を加える必要があるのである。
このことは、総額で考えた場合は自明のことであるが、単価主義で考えていることと格差修正率の計算に相乗積を用いていることから、特に誤りやすい内容である。

次に、不整形地で高低差がある場合を想定してみたい。

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上記の場合の総額は正しいのだろうか。
これも角地の場合と同じく誤っている。
対象地は、800万円になるはずである。
まず、対象地の高低差がない場合を考えてみると、不整形の減価が△10%であることから対象地の総額は1000万円×90%で900万円である。
次に、対象地には高低差があることから、造成費として100万円必要であり、
900万円-100万円=800万円が対象地の総額となるはずである。
この誤りを修正するためには、角地と同様に造成費の格差率を求める場合以降を修正しなければならない。

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即ち、角地の場合と同様に、造成費の格差率を求める分母に、不整形の減価率を加える必要があるのである。

4.画地条件は総和の方がいい場合が多い。
上記のとおり、格差修正として費用項目で計算される場合の個別的要因については、相乗積ではなく、総和の方が誤りがない場合が多い。

○上記の角地と造成費の場合

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○上記の不整形と造成費の場合

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5.路線価条件と画地条件が輻輳した場合は更に複雑になる。
個別的要因には、前記のとおり、路線価条件と画地条件があり、両条件が輻輳した場合は、格差修正率を求める場合、総和か相乗かが更に複雑になる。
複雑になることを避けるために(路線価条件による格差が出てこないようにするために)、近隣地域の範囲を対象地の路線沿いのみに設定する鑑定士もいるが、それは地域分析が大きく歪むことになるのではないだろうか。
近隣地域の標準画地の存在する地点と、対象地の前面道路沿いに格差がある場合(路線価条件が対象地に発生する場合)で、画地条件の格差がある場合は、どのようになるのだろうか。
画地条件で不整形と高低差の格差がある場合を考えてみる。

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即ち、路線価条件を含めた場合の格差修正率は、不整形減価に対しては路線価条件と不整形減価の相乗、標準価格に対する造成単価の割合である造成減価は、加算(減算)すれがいいことを示している。
一般的には、土地には路線価条件と画地条件が輻輳する場合が多く、画地条件を全て相乗積するということについては、結果としての鑑定評価額を誤ることが多く、単純に相乗積することは正確ではないと考える。
特に費用項目を積算して算出する場合には、誤りが明らかになる場合が多い。

以 上

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