千思万考10 地価公示の作業時期と公表時期

今日は12月31日。平成19年の大晦日である。
毎年のことであるが、大晦日は事務所で地価公示作業を行っている。
地価公示とは、地価公示法に基づき、全国で約3万地点の標準地について不動産の鑑定評価を行い、土地鑑定委員会が公示する制度であるが、毎年1月1日を価格時点としていることから、この時期が最も忙しい時期となる。

また、この時期は、相続税のための標準地の鑑定評価作業と重なり、3年に一度の固定資産税に伴う標準地の鑑定評価(私は参画していない。)作業と重なることから、不動産鑑定士にとって、毎年、年末から正月にかけてゆっくりすることはできない。

地価公示については、多くの批判もあるが、現在は土地基本法に基づき、相続税評価・固定資産税評価等の公的評価の一元化の基本的な価格指標となっており、また、地価の推移を示す資料として重要な統計資料となっていることから、参画している不動産鑑定士は、当然のこととして熱心にその地域の地価について調査し、分科会で多くの議論を交わして価格を決定している。

昭和47年から始まっている制度で、私ももう長く携わっていることから、年末年始は仕事・仕事となり、そのことについては慣習となっているが、ここで少し考えてみたい。本当にこの時期に1月1日の価格を決めなければならないだろうか。

地価公示作業には、直近に取引された多数の取引事例が必要であることから、地価公示制度が始まって以来、常にその取引事例をいかにして収集するかが大きな問題であった。今年から全国で国土交通省と不動産鑑定協会が一体となって行う取引事例収集システム(新スキームという。)が実施されていることから、収集に対する苦労は大きく逓減したといえる。(調査業務はより大変になっているが・・・)

しかし、新スキームにおいても、新スキーム開始前と同じく、直近の事例を多数にという条件はクリアーされていない。制度的に取引された登記情報がすぐ調査に回るのではない。集約してアンケートを行い、返信された不動産について調査を行って始めて取引事例となるのである。
取引されてから、実際に取引事例として利用可能な情報となるには、最低でも3ヶ月以上必要である。実態は半年程度遅れていることが多いのではないだろうか。

即ち、地価公示を行う場合、3ヶ月から半年程度前に行われた取引事例を元に、現在の価格を決めているのである。現実には、不動産鑑定評価であることから、当然のこととして過去の行われた取引事例そのままの価格ではない。取引時点から現在時点までの経済情勢を分析して取引事例の価格に時点修正を行い、1月1日の価格を決定しているのである。しかし、「今現在」の経済情勢の分析は非常に難しい。経済の専門家でさえ「今現在」を分析して数値を出すことは非常に難しいことなのである。

私たちは、経済の専門家でも研究者でもなく、不動産の価値を判定する実務家である。実務家として最も大切なことは、市場参加者の判断を正確に把握することではないだろうか。そのためには、実際の取引を分析することにつきると思うが、実際の取引事例は、上記のとおり3ヶ月から半年程度前のものである。また、現実の市場では、対象の標準地に対して大量の取引事例が存在するわけではない。1年程度前の取引事例を元に価格を判断しなければならない場合もあるのである。

地価公示では、平成10年頃までは紙ベースであった。私たちは手書き、ワープロ、パソコン等で鑑定評価書を作成していたが、統一のフォーマットで行っているのではなく、データ化することは困難であった。鑑定評価書提出後、チェック・集約・確認等を行って毎年3月末頃に公表されていた。
しかし、現在は、国土交通省の定める統一のフォーマットで地価公示作業を行い、鑑定評価書は全てデータ化されている。チェック作業等は大幅に短縮されているはずであるが、公表時期は紙ベースの時期から約1週間程度早まったに過ぎない。

私は、公表時期を早めた方がいいというつもりは全くない。およそ、統計資料として「今現在」のものを示す統計資料は存在しない。実証的な取引事例を調査して1月1日時点の価格を決定する作業を伴う地価公示については、1月1日時点の取引事例が調査できる時期を待って、価格を決定する必要があるのではないだろうか。そうでないと、ある意味で速報値としての性格にならざるを得ない。

現実の地価公示作業では、当然のこととして多くの聴取を行い、市場参加者の「今」を調査し、売り希望価格等も調査して、可能な限り直近の取引事例を収集するのであるが、それでも1月1日時点の取引を把握することは、時間的に絶対不可能である。

地価公示価格を決定するには、鑑定評価委員会の決定を必要とし、多くの時間が必要であることはわかるが、それでも3月20日頃の発表でいいのであれば、もっと直近の取引事例を調査する時間的な余裕が何とか作れないだろうか。

私は、できることならば、1月時点の取引事例が調査できる時期に地価公示価格を実証的に決定したほうがいいと思っている。そして、早めに速報値として発表し、正式に決定するには3ヶ月から半年程度遅れて発表してもいいのではないだろうか。

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