千思万考07 研修

不動産鑑定業界では、現在研修会が各地域で活発に行われている。
鑑定協会で研修規程を作ったのが、平成12年のことである。
その後、平成14年に研修ガイドラインが制定され、現在に至っている。

研修単位と受講科目を、(社)不動産鑑定協会のホームページで公開することとなり、平成14年度は全国で約70件の研修会が開催され、その後は毎年約100件程度の研修会が行われている。それぞれの地域で検討した必要なテーマが選ばれているようだ。

当然のこととして、現在行われている研修は、不動産鑑定士として必要な知識・技能等の研修であるが、本当に必要なものは何なのだろうか。
不動産鑑定士の試験制度には、「不動産鑑定評価理論」「不動産に関する行政法規」は当然のこととして、「民法」「経済学」「会計学」が組み込まれている。
これらの科目が基礎として必要な知識ではあるが、この試験に合格したからといって、すぐ仕事ができるわけではない。

現在の試験制度以前は、少なくとも3年間の実務経験を経た後、更に3次試験に合格して初めて不動産鑑定士となったものであるが、制度改正により、不動産鑑定士試験合格後最短で1年間の実務修習を受講して終了考査に合格すれば、不動産鑑定士となることができるようになっている。

わずか1年の経験で、不動産鑑定士として社会に出ることは非常にあやういと思うが、不動産鑑定業界で研修制度が充実してきたことは、非常にいいことだと思っている。
そこで、どのような研修を行うかということが重要なこととなるが、現在の研修制度において全国で行われているテーマは、土壌汚染やアスベストの問題等、大半が時代要請に対応したテーマとなっており、どちらかと言えば不動産鑑定の仕事を長く行っている鑑定士に対して行われているものが多い。

平成2年から10年以上変更されなかった不動産鑑定評価基準も、平成14年、平成19年と改正されてきており、不動産に対する市場参加者の期待形成が大きく変化してきている時代において、不動産鑑定士として必要な知識・技能は何かということを、真剣に考えなければならない時期に来ていると思う。

不動産鑑定評価を行うには、実務としては不動産に関連する多くの法律を前提とし、不動産鑑定評価基準に基づき手順を尽くしてその価格を求めていくことであるが、バックグラウンドとして、地質学、土木工学、力学、建築学、都市経済学、地域経済学等の知識も当然に必要であり、価格を分析する手法としての統計学、計量経済学も重要である。更に、時代変化に対応して近年金融工学も重要な科目となっている。
これらの全てに習熟することは困難であるが、少なくとも基礎的な部分は必要である場合が多く、私自身はその足りない部分については、タイアップしている専門家の協力を得て仕事をしている状況である。

鑑定協会という業界において、系統立てて多くの基礎的科目が勉強できるシステムができればいいと思っている。
しかし、ある物事を突き詰めて考え、研究していこうと思えば、本来的には受け身の研修ではなく自己研鑽により積極的に求めて研究する以外にないのではないだろうか。
そして、各人が考えたこと、研究したことを自由に発表できる場が、鑑定協会の中にあればいいと思う。

先月のことであるが、8月末に、徳島県で不動産鑑定シンポジウムが開催され、1泊2日で参加した。
私にとっては、有意義な研修を受講できたこと以外に、多くの友人・先輩達と懇親を深めることができ、非常に良かったと思っている。

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