不動産鑑定評価の問題点25 新制度の鑑定士実地演習について

不動産鑑定士の試験制度が変わり、初めての実務修習が行われている。
旧来は1次~3次まであったが、今は1本の試験となっている。

旧来の2次試験合格後2年間の実務を経て不動産鑑定士補となり、その後の1年間の実務補修を経た後、3次試験に合格して始めて不動産鑑定士となっていたものが、試験合格後実務修習を受けて、最短で1年で不動産鑑定士となることができるようになっている。

実務修習には、1年から3年までのコースがあり、その間に多くの評価書を実際に書き、審査を受けることになる。鑑定士になってから必要な基本類型をほとんど網羅していることから、全ての類型について、審査で合格すれば、現実に鑑定評価書は書けるだろう。
実際に実務修習を行っている鑑定士の卵の方は大変だろうと想像する。

新制度は、筆記試験ではなく実務を重視した点で、非常に評価できるが、しかし、私は一つの危惧を抱いている。
それは、鑑定評価書の演習に当たって、実際の依頼に基づく案件ではなく、依頼があったものとして「仮定」による鑑定評価書でいいということである。

★実務収集業務規程施行細則第16条

・・・一般実地演習は、・・・現実に存在する不動産を題材として、指導者が当該不動産の鑑定評価の依頼者であると仮定して、・・・鑑定評価依頼書を作成し、修習生に提示するものとする。

 

現実問題として、全ての類型について、各事務所に都合良くばらついて依頼があることは困難であることは理解できる。また、大学が教える場合、鑑定事務所ではないことから、「仮定」でなければ設定できないこともわかる。

それでも、あえて一般実地演習が仮定でいいのか、と思う。
実際の鑑定評価の実務は、依頼という作業があって始めて成立するのである。
その依頼を受け付ける段階において、依頼者から目的や条件等多くの情報を聞き、最終的に依頼を受けるかどうかを判断する必要がある。

全ての依頼を無条件に受け付けて鑑定評価の作業を行うのではない。
ある意味で、依頼を受け付ける段階が最も大切な場面であり、依頼者との真剣勝負の場所である。依頼者は、何らかの目的を持って鑑定評価を依頼しているのであり、その依頼が鑑定評価基準に合致していない場合は、現実に依頼を断ることも多い。
依頼受け付けの現場は、鑑定評価書作成の出発地点であり、最も大切な場面である。

「仮定」による依頼で鑑定評価書を書く練習を行うのみで、不動産鑑定士と認定されることは、不動産鑑定士として最も必要な資質の一つの訓練を省略しているのではないだろうか。

以 上

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