不動産鑑定評価は実践理論です。 このサイトでは、不動産鑑定評価における 様々な問題点を考えたいと思っています。

戦後の高度成長期、バブル期、バブル崩壊期を経て、 不動産の価格は大きく変化しました。 一方、この間の賃料の変化は比較的緩やかでした。 価格と賃料の変化に対応して市場参加者の不動産に 対する考え方も変わりつつあります。 このサイトでは、不動産の価格及び賃料の適切な 経済価値を判定することを使命としている 不動産鑑定評価における様々な問題点を、 忌憚なくかつ背伸びせず述べていきたいと 思っています。

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千思万考


11 実務家と研究者

2008-02-02

私は地方の不動産鑑定士であり、実務家である。といつも言っている。
改めてここで、実務家について考えてみたい。
実務家とは、広辞苑では「実務にあたる人、実務に熟練した人」となっており、実務とは、「実際の事務」「実地に扱う業務」となっている。
従って、実務家とは「実際に事務にあたる人、実地に扱う業務に熟練した人」ということになる。

ここでは、報酬のことを書いていないが、当然のこととして事務及び業務を行う場合は報酬が伴う。
「実務家」とは、「報酬を得て実務にあたり、その実務に熟練した人」というような定義になるのではないだろうか。
私たち不動産鑑定士は、業として不動産の鑑定評価を行っており、不動産鑑定評価の実務に熟練した人ということになる。「熟練している」ということについては、自分としては面はゆいが、社会的に認知されている資格でもって、報酬を得て反復・継続して長年業務を行っていることから、実務家といっていいだろう。
一般的には、何らかの資格を持ってその仕事を行っている人は、ほぼ全てがこの実務家に該当する。

私たち不動産鑑定士は、実務家として当然のことであるが、不動産の鑑定評価を行うにあたり、仕事として受けた以上必ず結論を出さなければならない。
価格水準の分かりにくい地域もあり、取引事例が何倍にもばらついている地域もある。物件によっては、過去何年も取引のない地域すら存在する。それでも依頼を受託した以上必ず価格を求め、示さなければならない。結論のない、換言すれば価格が分からなかったという実務はないのである。
これは、おそらくどのような職業の実務家も同じだろう。仕事を受けたが調査した結果、「解答できません。」または「わかりません。」では仕事にならない。
それも、時間が無限に与えられるわけではない。ほとんどの場合は限られた短い時間の中で最大限努力して結論を導き出す以外ないのである。

実務家に対する言葉として「研究者」と云われる人たちがいる。
一般的は、学者とその卵(大学院生等)、シンクタンクの人達であろうか。
研究者とは、広辞苑には「研究」の意味が、「よく調べ考えて真理をきわめること」となっており、研究者の記載はないが、「よく調べ考えて真理をきわめる人」ということになる。
ここには、「報酬を得て」という言葉を付けない方が、違和感がない。

学者は、それまでに得た知識及び技能を教授することで主として報酬を得、シンクタンクの人たちは、コンサルタント等を受託し仕事をすることで報酬を得ているのである。しかし、生徒に教授すること、コンサルタントの仕事をすることは、実務家としての分野である。
この人達が研究者と呼ばれるのは、専門分野を研究する時間をより多く取るように努力しており、かつ真理を追究してその内容を発表しているからではないだろうか。

私は、ここ10年近く研究者と呼ばれる人たちとお付き合いをさせていただいている。
本当に感心するのは、休日もほとんど研究に費やし、新しい論文を読み、常に思考していることである。また、何かに行き詰まったときに、引き出しが多いことである。それまでの経験で多くの解決方法、考えていく方向性を持っているのだろう。また、私であれば途中で迷路に入ったら思考停止に陥るような場合でも、次々と思考を途切れささないことについては、驚かされることが多い。

私は、長年依頼を受けて不動産鑑定評価書を提出するという仕事を続けているため、結論を急ぎ過ぎるきらいがあるのだとつくづく思う。
もちろん、研究者と呼ばれる人たちも、学会に論文を提出しなければならない等、時間的制約がある場合も多いが、最先端のことを追究している場合、短期間に結論が出ることばかりではない。途中で投げ出さず研究を続けていることが、大切なのだろう。

私は不動産鑑定士として仕事をし、報酬を得ている実務家であるが、その内容は、不動産という社会経済において大きな資産の価値を調査し、価格として置き換えることである。少なくとも不動産に携わっていない人々より、実感としてその変遷を知ることができる。不動産の価値とその動向について、その本質的な意味を実務家として追究していきたいと思っている。そして常に研究する姿勢を持ちたいものだと思っている。