不動産鑑定評価は実践理論です。 このサイトでは、不動産鑑定評価における 様々な問題点を考えたいと思っています。
戦後の高度成長期、バブル期、バブル崩壊期を経て、 不動産の価格は大きく変化しました。 一方、この間の賃料の変化は比較的緩やかでした。 価格と賃料の変化に対応して市場参加者の不動産に 対する考え方も変わりつつあります。 このサイトでは、不動産の価格及び賃料の適切な 経済価値を判定することを使命としている 不動産鑑定評価における様々な問題点を、 忌憚なくかつ背伸びせず述べていきたいと 思っています。
2007.03.07
1.はじめに
不動産の賃料は、土地に対する賃料、建物に対する賃料に大別され、それぞれが新規賃料と継続賃料に区分される。
更に、用途的には土地・建物に対応して、居住用、事務所用、店舗用等多くの異なる要因を持ち、一概に論ずることはできない。特に、土地と建物の区別、新規賃料と継続賃料の区別は絶対的に必要であり、「賃料」としてを一括りにして述べることは困難である。
近年、私たち不動産鑑定士の業界においては、賃料の鑑定評価手法についての議論が多いが、まず、どの賃料を対象にしているかを明らかにして議論する必要があるのではないだろうか。本稿では、オフィスの新規賃料の形成要因について、就業者人口の変化が有意か否かを分析するものとする。
オフィス賃料とは、オフィス用建物の空間価値のサービスの価格であり、就業者の集積が進むにつれて空間価値の需要が増大し、賃料は上昇することが想定される。本稿では、商業活動が活発に行なわれている大阪の中心商業地域内におけるオフィス賃料を検討の対象とする。
分析の範囲は、大阪市の中心商業地域を形成しており、事業所数の多い上位4区の中央区、北区、西区、淀川区を対象とし、面積約500坪以上の建物を対象としている。
具体的には、三鬼商事(株)の保有する1985年から2004年のオフィス賃料のデータのうち、上記4区内及び対象規模に該当する740のサンプルを対象としている。
2.就業者人口の変化
大阪市が平成12年度におこなった土地利用調査を利用して、町丁目単位で商業用に利用されている建物面積割合、全体の建物面積に占める商業用建物面積の割合が把握できる。また、国勢調査結果と上記土地利用調査を利用して5年ごとの町丁目単位の就業者数を把握することが可能である。
特徴的な就業者人口の変化を、下図に示す。
1990年から2000年にかけて、平野町4丁目は直線的に就業者人口が減少し、逆に久太郎町3丁目、博労町3丁目は増加しているが、瓦町3丁目は概ね横這い傾向で推移している。
これらの地域において、オフィスの新規賃料に就業者人口の変化がどのような影響を与えているかを検討してみたい。
3.ヘドニック・モデルと分析結果
オフィスビルの賃料について空間的な価格の違いは、その立地特性と構造特性および機能特性によって規定されていると考えられる。ここで、立地特性とはそのビルの利便性(アクセシビリティ)や周辺の業務機能集積度等であり、構造特性とはそのビルの階数、総面積等物理的な構造をいう。また、機能特性とは、駐車場の有無、インテリジェントビルへの対応、セキュリティ等の管理の状況等である。
市場均衡の賃料()は、それぞれの特性をベクトル(
)で示し、次のモデルで表される。
(1)
ここで、新規募集賃料(
)と市場均衡賃料(
)との関係については、新規募集賃料と市場均衡賃料との差が、空室率(
)として顕在化するものと考える。中村(1994)@、有馬(1995)Aの定式化を参考にして、新規募集賃料を被説明変数とするモデルを次のように定式化する。
(2)
(2)式を(1)式に代入し、より一般的な関数型を想定する方法として被説明変数にBox-Cox変換を施した形でヘドニック・モデル推定式を示す。
(3)
ここで、λ=0の場合は被説明変数は
となる。更に年時ダミーを加えており、
は推定の際の誤差項である。
分析結果の詳細は割愛するBが、Box-Cox変換におけるλの値は−0.37、決定係数は0.713であり、就業者人口を町丁目の面積で割った就業者密度の係数の推定結果は1.651(t-値:3.79)と有意で符号条件も合致している。
一方、年次ダミーの推定結果は下記のとおりである。
| 時点ダミー | 係数 | (t−値) |
| 1986年 | -0.153 | (-0.92) |
| 1987年 | 0.509 | (0.32) |
| 1988年 | 1.986 | (1.37) |
| 1989年 | 5.415 | (4.15) |
| 1990年 | 8.147 | (5.37) |
| 1991年 | 15.941 | (10.37) |
| 1992年 | 17.554 | (10.61) |
| 1993年 | 14.821 | (8.96) |
| 1994年 | 11.579 | (6.79) |
| 1995年 | 9.465 | (3.57) |
| 1996年 | 6.304 | (1.81) |
| 1997年 | 4.826 | (1.48) |
| 1998年 | 9.623 | (3.59) |
| 1999年 | 9.529 | (3.14) |
| 2000年 | 10.213 | (3.63) |
| 2001年 | 6.938 | (1.62) |
| 2002年 | 2.238 | (0.26) |
| 2003年 | 5.417 | (1.43) |
| 2004年 | -1.200 | (-0.21) |
| (注)各係数の推定値は10-3 | ||
4.就業者人口の変化に伴う賃料インデックスの変化
以上の結果に基づき、上記4地点に対応した標準物件を、いずれも御堂筋沿いに設定し、それぞれのヘドニック分析で求めた各係数の推定値を採用した。更に、時点ダミーを加えることにより、賃料の推移及び就業者人口の変化の影響の程度を求めることができ、その結果を下図に示す。
上図は、就業者人口の減少が著しい平野町4丁目と増加傾向を示している久太郎町3丁目の標準物件の推移を示したものである。当初就業者人口の多かった平野町4丁目が久太郎町3丁目よりやや高い賃料を示しているが、就業者人口の減少に伴い平野町4丁目の賃料水準が下落している状況を示している。
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また、上図は当初平野町4丁目の就業者人口が多いことから、賃料水準が博労町3丁目より高いが、その後の人口減少に伴い、平成4年には両者がほぼ同じ水準となっていることがわかる。
以上により、就業者人口の推移は、オフィスの新規賃料の形成要因として大きな影響を与えていることが判明した。
以上