不動産鑑定評価は実践理論です。 このサイトでは、不動産鑑定評価における 様々な問題点を考えたいと思っています。
戦後の高度成長期、バブル期、バブル崩壊期を経て、 不動産の価格は大きく変化しました。 一方、この間の賃料の変化は比較的緩やかでした。 価格と賃料の変化に対応して市場参加者の不動産に 対する考え方も変わりつつあります。 このサイトでは、不動産の価格及び賃料の適切な 経済価値を判定することを使命としている 不動産鑑定評価における様々な問題点を、 忌憚なくかつ背伸びせず述べていきたいと 思っています。
2007.09.20
1.路線価式評価手法
土地価格について、私たち不動産鑑定士は、不動産鑑定評価基準(昭和39年に制定、最新は平成19年7月改正)に基づいて、土地価格を決定している。私たちが参加している地価公示法に基づく地価公示、国土利用計画法施行令に基づく地価調査は、当然のことながら不動産鑑定評価基準に基づいている。
しかし、公的な土地評価としては、上記以外に下記の基準がある。@
○固定資産税の評価手法
昭和38年制定の固定資産評価基準に基づき、市町村が評価するもので、評価手法としては、市街地宅地評価法とその他の宅地評価法があるが、市街地宅地評価法の流れを記載すると、下記のとおりである。
用途地区区分→状況類似地域の区分→主要な街路の路線価→標準宅地の選定
→標準宅地の時価の評定→その他の街路の路線価評定→画地計算法を適用
→各筆の評価額の決定
○相続税の評価手法
昭和39年制定の財産評価基本通達に基づき、国税庁が評価するもので、評価手法としては、路線価方式と倍率方式があるが、路線価方式とは、市街地的形態を形成する地域で採用される方式であり、その宅地の面する路線に付された路線価を基とし、画地計算法を適用して評価する方法である。
平成元年に制定された土地基本法第16条に基づき、平成6年以降の固定資産税評価・相続税評価において、地価公示の価格との均衡が保たれるようになっている。
上記固定資産税の評価手法である市街地宅地評価法と、相続税の評価手法である路線価方式は、いずれも対象不動産の存在する道路沿いに標準的な画地Aを設定して路線価を敷設し、対象不動産の画地に対応した補正率Bを乗じて求める方式であり、基本的な手法が同一であることから、以下路線価式評価手法と呼ぶことにする。(地価公示・地価調査、固定資産税路線価、相続税路線価は、財団法人資産評価システム研究センターの全国地価マップで公開されている。)
2.鑑定評価の手法
不動産鑑定評価基準では、土地価格を求める手法として、下記の段階を経て求めることとされている。
一般的要因の分析→地域分析→個別分析→鑑定評価方式の適用(原価方式・
比較方式・収益方式)→試算価格の調整→鑑定評価額の決定
ここで、地域分析とは、“対象不動産がどのような地域に存するか、その地域はどのような特性を有するか、また、対象不動産に係る市場はどのような特性を有するか、及びそれらの特性はその地域内の不動産の利用形態と価格形成について全般的にどのような影響力を持っているかを分析し、判定することをいう。”と定義されており、具体的には近隣地域における標準的使用と標準価格を判定することである。
個別分析とは、“対象不動産の個別的要因が対象不動産の利用形態と価格形成についてどのような影響力を持っているかを分析してその最有効使用を判定することをいう。”と定義されており、具体的には対象不動産の最有効使用と、標準価格の形成要因と比較した対象不動産の個別の価格形成要因を把握することである。
土地価格比準表(国土庁土地局地価調査価監修、第6次改訂)では、基準地の価格から対象不動産の価格を求める手法として具体的に記載しているが、取引事例から対象不動産の価格を求める手法を例として図示すると、下記のとおりである。
この方式を、「宇宙ステーション方式」ともいうが、ここでは「標準価格方式」と呼ぶことにする。
【例示】
類似地域内に取引事例(97,200円/u)がある。
取引事例から近隣地域内の標準価格を求め、対象不動産の価格を試算する場合である。C
図−1


| @ | まず、取引事例は、類似地域内に所在することから標準化補正(100/81)を行いD、類似地域の標準価格を120,000円/uと推定する。 |
| A | 次に、類似地域と近隣地域の比較(100/120)を行い、近隣地域の標準価格を100,000円/uと査定する。 |
| B | 最後に、対象地の個別性から個別格差(72/100)を乗じて、対象地の価格を72,000円/uと試算する。 |
3.比準方法について
上記例で、取引事例から最終的に対象地の価格を求めるのであるが、その具体的手法としては、取引事例から類似地域内の標準価格を求める@の過程、類似地域と近隣地域を比較するAの過程、近隣地域の標準価格から対象地の価格を求めるBの過程があり、下記の要因を比較して求めるものとなっている。
図−2

上記のとおり、具体的な比準方法としては、価格形成要因として下記の条件を比較している。
@の標準化補正、Aの地域格差、Bの個別格差全てに共通
街路条件
交通接近条件
環境条件
行政的条件
その他条件
@の標準化補正とBの個別格差
赤字で記載している画地条件が含まれている。
即ち、@とBは全く同じ内容であり、画地条件以外は@〜B共通である。
ここで、街路条件からその他条件に至るまでは、全てに共通であることから、画地条件とは性格を異にしており、これらを総称して「路線価条件」と呼ぶことにする。
すなわち、路線価条件には、上記、街路条件・交通接近条件・環境条件・行政的条件・その他条件が細目として含まれている。
路線価条件と画地条件を適用して、具体的に鑑定評価においてどのような手順で比準しているかを記載すると、下記のとおりである。
図−3
3.標準化補正の方法
@の標準化補正の方法を、図−1の例を用いて具体的に記載する。
図−4

図−5
上記1で、画地条件による補正を行い、取引事例の接面道路沿いに標準画地を想定した価格(路線価)を108,000円と求め、2で想定上の標準画地と地域の標準画地との路線価条件補正を行い、類似地域の標準画地の価格(路線価)を120,000円/uと求めていることとなる。
画地条件補正と路線価条件補正が相乗されて、標準化補正率が81%となっているものである。
4.個別格差の方法
図−1のAで、地域比較(路線価条件による比較)を行い、近隣地域の標準価格を100,000円/uと求めており、同Bで個別補正(72/100)を行い、対象地の価格を72,000円/uと求めているが、路線価条件と画地条件が混在していることから、標準化補正と同じく区分して記載すると、以下のとおりである。
図−6

上記1で、路線価条件による補正を行い、対象地の接面道路沿いに標準画地を想定した価格(路線価)を90,000円と求め、2で想定上の標準画地と対象地の画地条件による補正を行い、対象地の価格を72,000円/uと求めていることとなる。
画地条件補正と路線価条件補正が相乗されて、標準化補正率が72%となっているものである。
5.標準価格方式と路線価式評価手法の違いは
鑑定評価における標準価格方式とは、地域分析により近隣地域の標準価格を求め、個別分析により対象地の個別的要因を査定して対象地の価格を求めるものであるが、具体的には、上記図−3の手法をとっている。
鑑定士は近隣地域の標準価格といっているが、このことは近隣地域の最も標準的な道路に沿った標準的な画地の価格のことであり、路線価と概ね同等である。E
従って、公的評価で求める価格は、それぞれ定義が異なるが、現在は土地基本法で均衡化がなされており、評価手法としては、鑑定評価による標準化法式と路線価式評価手法は同じ内容の方式である。
路線価式評価手法では、路線価が与えられたものとしてF画地計算法を適用して対象地の価格を求めているが、不動産鑑定評価で採用している標準価格方式は、その路線価を求める方法を具体的に定めているといえる。
6.路線価条件とは
これまでに記載のとおり、路線価条件とは土地価格比準表でいうところの街路条件からその他条件までを総称しており、街路に関する条件、環境に関する条件、交通接近に関する条件、行政的な規制に関する条件、その他の条件が含まれている。
画地条件とは、取引事例及び対象地の接面する道路沿いに標準的な画地を想定した場合に、画地の規模・形状・高低差等画地特有な価格形成要因である。
従って、土地の価格形成要因は大きく分けて接面道路沿いの標準価格の形成要因である路線価条件と、対象地の画地特有の形成要因である画地条件に大きく分類されるものと考えている。
不動産鑑定評価で、土地価格を求めるということは、このように全ての取引事例について路線価を設定していることと同じであり、路線価を設定することは、不動産鑑定評価の作業の一部である。
以 上